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2017/05/01

空力弾性とフラッタの数理 その1

■はじめに

古本屋で鷲津久一郎「空力弾性学」を入手したので,非圧縮2次元平板翼の2自由度フラッタのメカニズムを書いてみることにした

■フラッタとは

構造物が風や気流のエネルギーを受けて起きる自励的な振動のことである。特に高速飛行中の飛行機の翼や胴体に生じるものを指すことが多いが,旗が風でひらひらとはためくのも立派なフラッタである。
フラッタは共振現象とは異なる。系の固有振動数ωと同じ振動数の周期的な外力が入力されたときに振動が発散するのが共振現象であるが、フラッタは気流速度がある程度以上になると(気流速度は周期的でなくとも)振動が発散する現象である。


■準備: 1自由度系の振動と負減衰力

図1.1 1自由度系

質量mの物体がばね定数kのばねと減衰係数cのダンパーを介して剛壁に支持されている図1.1のような1自由度の振動系を考える。静的つりあい位置からの変位をxとすると,ばねの力は kx ,ダンパーの力は cdx/dt であるから,この系の運動方程式は
m¨x+c˙x+kx=F(t)
いま,外力 F(t)が働かないときを考えると,
m¨x+c˙x+kx=0
ここで,記号を簡単にするために両辺を m で割ると
¨x+2γω0˙x+ω20x=0
ただし
ω0=km,γ=cmk
上式の解として x=x0eλt と仮定して代入すると,
λ2+2γω0λ+ω20=0
λ=(γ±γ21)ω0
2次方程式だから解ははふたつあり,ここではλ1=(γγ21)ω0,λ2=(γ+γ21)ω0と書くことにしよう。
もともと(1)式の微分方程式を解こうとしてx=x0eλt の形の解を仮定してこのλ1,λ2が得られたのだから,このλは指数関数eの肩に乗ることになる。この

(1) γ>1 のとき λ=(γ±γ21)ω0<0 は負の実数であるから,変位 x=eλt は時間とともに単調に減衰する解となる。これを過減衰という。
(2) 一方 0<γ<1 のとき λ=(γ±1γ2i)ω0 は実部が負であるような複素数であるから,この場合変位 xは 
x=eλt=eγω0t±1γ2iω0t=eγω0t(cos1γ2ω0t±isin1γ2ω0t)
となり,振動しながら時間とともに減衰する挙動となる。
(3) もちろんγ=0 (すなわちc=0)のときは λ=iω0 だからこれは固有振動数 ω0 の減衰しない単振動になる。

さて,ここで(そのようなダンパーが実際に存在するかはひとまずおいておいて)負減衰 すなわちγ<0の場合も含めて解を分類すると以下の表のようになる。

Re(λ)振幅Im(λ)振動挙動
(1)γ>1(γ±γ21)ω0<0減衰0しない過減衰
(2)0<γ<1γω0<0減衰±1γ2ω0する減衰振動
(3)γ=00中立ω0する調和振動
(4)1<γ<0γω0>0発散±1γ2ω0するフラッタ
(5)γ<1(γ±γ21)ω0>0発散0しないダイバージェンス

この表で(4)にあたるものが,動的不安定現象すなわちフラッタである。
しかし,(4)ないし(5)のように,減衰力が負になるということは一体どのような場合だろうか。構造物であれば内部摩擦は確実に減衰方向に作用するし,かといって図1.1の外力F(t)が単に作用するだけでは強制振動となる。
フラッタとはある速度域を超えると空気力が航空機に対して負減衰力として働くことにより生じる現象である。
上記の表からわかるように、調和振動の条件を求めればそこを境に減衰/発散が切り替わるから、通常フラッタの解析においては調和振動解を求めればよい。すなわち、適切な運動方程式に対して