特に違和感なく使っているこの言葉,よくよく考えてみるとちょっと変だ。
「負けず」の「ず」は日本語では多くの場合否定の意味に使うから,
負けるのが嫌い=「負ける嫌い」や「負け嫌い」と表現すべきであり,「負けず嫌い」では意味が逆になってしまうように思える。
これについてはウェブ上にもいくつか考察があがっている。
説①:「負けじ魂」と「負ける嫌い」という二つの言葉が混交した
説②:「負けず嫌い」の「ず」は否定ではなく,推量を表す「むず」が変化したもの
「負けるであろうことが嫌い」という意味である
などなど。
まあ言いたいことはわからないでもないが,どうもスッキリしない感じはある。
むしろ,自分は素直に「ず」を否定でとらえるのがよいのではと思っている。
負けず嫌いで有名なバスケの神様,マイケル・ジョーダンの名言のひとつに次のようなものがある
オレは9,000回以上シュートを外し、300試合に敗れた。
決勝シュートを任されて26回も外した。
人生で何度も何度も失敗してきた。
だからオレは成功した。
負けず嫌いな人の通算成績は,例えば1243勝988敗のようなものであり,
逆に負けるのが嫌いな人の通算成績は,1勝4敗のようなものである。
単に負けた数だけを比べたら,後者の方がずっと少ない。
負けず嫌いな人は,負けることが嫌いなわけではない。
負けないために挑戦しないことが嫌いなのだ。
負けないためにもっとも確実な方法,それは戦わないこと。
そのやり方を良しとしない人のこと,負けないために挑戦を回避することを許せない人のことを「負けず嫌い」と呼ぶのだろう。
そしてこの言葉は,単に負けるのが嫌いな「負ける嫌い」よりずっと含蓄のある表現だと思うのである。